全国で広がり続ける深刻な空き家問題。
空き家が増えると近隣住民だけでなく、地域全体にも悪影響が出ます。
今回は、この深刻な空き家問題が地域に及ぼす具体的な影響や問題点、加えて解決の糸口となる「DIY型賃貸借」について詳しくご紹介していきます。
年々増加し続ける空き家。
これが現在大きな問題となってきています。
すでにお話ししましたが、全国的に年々空き家が増え続けており、問題が深刻化してきているのが現状です。
5年ごとに実施されている「住宅・土地統計調査」では、最新結果(2018年)に過去最悪となる13.6%を記録。
7軒に1軒は空き家となっている現在。
この空き家を物件種別で見てみると衝撃の事実が判明しました。
なんと、アパートを含む「賃貸用の住宅」が50.9%、つまり空き家全体の半数以上を占めていたのです。
そしてその数は431万戸にも上ります。
なぜここまで空き家が増えてしまっているのでしょうか。
理由は大きく5つ考えられます。
まず一つ目の理由ですが、年々世帯数が減少している中で、必要となる世帯数以上に住宅が増え続けていることを挙げることができます。
2つ目の理由は、「新たに建設する新築の住宅の数」が「取り壊される住宅の数」を上回ってしまっていることです。
無くなった住宅の分新たに建てるのであれば問題はありませんが、空き家となり取り壊さなければいけない住宅の数が多いのに、さらに新しい住宅を建てるためどんどん空き家が増加してしまうのです。
そして3つ目の理由は、単純に中古住宅の人気がないため。
新築の住宅の方が高い需要があるためアパートを含む賃貸住宅の空き家が増えてしまうのはごく自然なことだと考えられます。
また、築10年経った賃貸住宅であっても、家賃が大きく値下げされるケースは少なく、新築の物件とあまり大差のない家賃となってしまっているのが現状です。
家賃にそれほど差がないのであれば、綺麗な新築に住みたいと考えるのが多くの人々の考え方でしょう。
このような現状があり、中古住宅の人気が落ちてきているのです。
4つ目の理由は空き家予備軍が増加していること。
高齢者世帯や単身世帯は特に空き家になりやすいと言われています。
そして、その空き家予備軍と呼ばれる世帯の数は年々増加し続けているのです。
そして空き家予備軍の数はこの先もさらに増え続け、これからますます空き家問題は深刻化していくでしょう。
最後の理由ですが、相続により取得した物件を放置している人が多いことです。
親が住んでいた家を相続したが、相続人も誰も住まないでいるうちに物件が老朽化し、解体しようにも費用が高くて解体できないということも多いようです。
空き家が増えている原因は理解できたのではないかと思います。
では、空き家が増え続けることによりどのような問題が起こるのでしょうか。
空き家が増え続けると、周辺に悪影響を及ぼします。
具体的には野良猫や野良犬、害虫などが住み着いてしまい、周辺にもその支配が及ぶことが挙げられるでしょう。
また、放置された空き家は老朽化が進み、家屋の倒壊や屋根の崩落などの危険性もあります。
空き家は不法侵入や放火などの犯罪行為を助長します。
不法侵入は近隣住民に対する直接的な影響はないものの、地域の治安に大きく影響するでしょう。
また、近年は空き家への放火事件が増えてきている傾向にあるため、老朽化が進んだ空き家(特に木造住宅)は火の回りが早く、大変危険です。
近隣住宅に火が燃え移り被害が拡大することも考えられます。
アパートの空き家が増加してきていること、また空き家を放置してしまうことによる悪影響についてご紹介しました。
アパートの空き家問題を解決するために国は様々な施策を講じていますが、ここからはその中の一つである「DIY型賃貸借のすすめ」について紹介します。
「DIY型賃貸借」とは、アパートなどの賃貸住宅の一つの契約形態です。
これまでの賃貸住宅であれば借主は自分の好きなように部屋を作り替えることができませんでした。
そんな問題を解決するのがこの「DIY型賃貸借」。
DIY型賃貸借は、家賃を低く設定する代わりに、借主がDIYやリフォームで部屋を自由に作り替えることができ、その作り替えた部分も、原則として退去時に元の状態に戻す必要がないのです。
DIY型賃貸借を行う場合のアパート経営者側(大家さん)のメリットとしては3つ挙げられます。
まずはリフォーム費用を負担することなくそのままの状態で貸し出すことができるという点。
これまでの賃貸借であれば、リフォーム費用が多くかかり経営者側の負担が大きかったのですが、この形態でその負担が大幅に激減しました。
そして2つ目、借主がDIYなどで自分の理想の空間に部屋を作り替えるため、長期間の入居が期待できるという点。
自分の作った部屋に愛着が生まれやすいため、その分長い期間住んでくれる可能性が高まります。
最後のメリットとして、貸し出した時に比べて設備の価値が高くなっている可能性が期待できることが挙げられるでしょう。
借主のリフォームやDIYによって貸し出した時よりも素敵な空間・設備になっている可能性があるのがこのDIY型賃貸借のポイント。
<DIY型賃貸借における借主のメリット>
借主のメリットも3つほど挙げられます。
一つ目は、賃貸住宅では難しいとされていたリフォームを自由にできるという点です。
これまでの賃貸住宅であれば、リフォームはほとんど禁止されていました。
自分の持ち家でなければリフォームは難しいとされていたのですが、DIY型賃貸借ではこの問題を見事解決。
自分の好きな空間に作り替えることができます。
2つ目のメリットはリフォーム費用を自分で負担する代わりに、安い家賃で住むことができるということです。
リフォームは自分で負担しなければいけないものの、その代わり家賃が相場に比べて低く設定されているため、リフォームにより設備がどれだけ良くなったとしても、ずっと安い家賃で住み続けることができます。
そして最後のメリットは、退去する際に部屋を元の状態に戻すための費用を取られないという点です。
どれだけ大きく作り替えたとしても、原状回復費用は原則として取られません。